5/10の2022年Q1決算発表の後にブレイクアウトし、その後、6月に入ってからも順調に株価を伸ばしているバーテックス・エナジー(VTNR)を紹介します。
直近の2022年Q1の決算発表の数字だけ見ると、以下のようにあまりぱっとしない結果だったのですが、株価は強い値動きで上昇を続けています。
2022年Q1決算
- ❌ 売上$40.22M vs 予想 $57.1M
- ⭕️ EPS $-0.08 vs 予想 -$0.14
こんなにも投資家から買われているのは何故でしょうか?この記事ではその疑問にお答えできればと思います。
それでは、バーテックス・エナジーの事業内容と今後の見通しを確認していきましょう。
バーテックス・エナジー(VTNR)の企業概要
会社沿革
2008年5月14日にバーテックス・ホールディングス、テキサス州のリミテッド・パートナーシップ、ワールド・ウェイスト・テクノロジーズが合併し、ネバダ州法人として設立されました。
以下のように多数の子会社を複合した企業体となっています。
2021年5月にShellとアラバマ州にあるモービル製油所およびそれに関連する不動産ならびに関連資産を購入する契約を締結し、2022年4月に買収が完了しました。
モービル製油所は、アラバマ州モービル市にあります。現在の年間生産量の約70%は留出油、ガソリン、ジェット燃料で、残りは真空ガス油、液化石油ガス(LPG)、その他の製品です。大容量のトラックラックと、水上船舶への供給が可能な深海および浅海の配給ポイントを通じて、米国南東部全域に製品を配給しています。
事業内容
バーテックス・エナジーの既存事業は大きく3つに分かれています。
- ブラックオイル
- 石油精製・販売事業
- 回収事業
ブラックオイル
ブラックオイル部門では、使用済みの自動車オイルを第三者から直接回収・購入、または地元や地域の回収業者の確立したネットワークから使用済み自動車オイルを収集し、工業用バーナーの原料や代替燃料として使用する顧客に販売しています。
精製・販売セグメント
精製・販売事業では、収集した原料をより付加価値の高い最終製品に再精製し、顧客に販売する事業を行っています。また再精製後の製品の輸送・貯蔵事業も行っています。使用済み自動車オイル、石油留分、トランスミックス及びその他の規格外化学製品など、多様な原料を収集しています。
再精製製品は消費者に直接販売するか、さらなる精製を行う処理施設に販売しています。また、ガソリン、混合ガソリン、ディーゼルエンジン用燃料などの精製燃料を小売店や消費者に再販する第三者にも提供しています。
上記の既存事業に加えて、モバイル製油所の買収完了により、原油の精製を行いディーゼル、ガソリン、ジェット燃料を生産して販売する事業を開始しています。
回収部門
回収部門は、炭化水素の適切な回収・管理のための発電機ソリューション、基油やその他の石油製品の販売・マーケティング、および金属の回収・加工を行っています。
顧客
ブラックオイル部門は、米国メキシコ湾岸および中西部地域の多数の顧客に、使用済み石油、VGO、基油をはじめとする石油原料を販売しています。主な顧客は、包装業者、販売業者、ブレンダー、工業用バーナー、及び原料の再精製業者です。
モバイル製油所で生産される石油製製品(ディーゼル、ガソリン、ジェット燃料)は、ミシシッピ州、アラバマ州、ジョージア州、フロリダ州北西部の顧客に供給されています。
競合他社
石油製品および使用済み製品の回収、輸送、処理、仲介を行う中小規模の企業が多数存在しており、以下のような企業が競合となります。
- Clean Harbors, Inc.
- Rio Energy, Inc.
- Heritage-Crystal Clean, Inc.
- Origin Americas LLC
石油精製事業については以下の企業と競合します。
- Marathon Petroleum Corporation (MPC)
- Valero Energy Corporation (VLO)
- Phillips 66 (PSX)
- HF Sinclair Corporation (DINO)
- Derek US Holdings, Inc. (DK)
2022年Q1の決算発表資料より
2022年2Qにアラバマ州のモバイル製油所の買収を完了し、新たな成長のステージに入っています。モバイル製油所においては、再生ディーゼルの生産を行う設備を構築するプロジェクトを開始しており、2022年Q4に完了する計画です。
バーテックス・エナジーが保有する資産は、原油の生成を行うアラバマ州のモバイル製油所、使用済み自動車オイルの精製を行う2つの製油所(ルイジアナ州、オハイオ州)、使用済み自動車オイルの輸送・貯蔵施設から成り立っています。
モバイル製油所は、海上輸送に有利なメキシコ湾岸に位置しており、75,000バレル/日 の留出油、ガソリン、ジェット燃料等を生産可能な施設となっています。また、3.2 millionバレルの貯蔵が可能です。
モバイル製油所の生産容量は、競合他社のDerek US Holdings, Inc. (DK)の約4分の1の規模となります。
モバイル製油所は、原油の供給及び石油精製品を流通するのに適した位置にあります。現在、原油の供給は、56%を海上輸送、42%をパイプラインから受けています。
精製品の主な出荷先は、ミシシッピ州、アラバマ州、ジョージア州、フロリダ州北西部となっており、1日に175台のトラックで輸送が可能です。また、ディーゼル、ジェット燃料を中南米に輸出する能力があります。
モバイル製油所の2022年の粗利の見通しは$370M-$390Mとなっており、これはバーテックス・エナジー全体の粗利の85%に当たります。つまり、モバイル製油所の買収により、原油精製の事業が主力の企業に変革したと言えます。
モバイル製油所の見通し
バーテックス・エナジー全体の見通し
株価チャート
日足チャートを確認すると、5/10の2022年Q1の決算発表の直後から株価の急騰が始まっており、5月中旬から月末までの調整で出来高と値動きが収束した後に、6月に入ってから出来高の増加を伴って上昇が加速中です。
週足チャートを見ると、2021年7月頃からカップの生成を開始し、2022年5月に取手が出来上がり、上昇を開始していることが分かります。
2022年Q1までの売上と利益の推移を見る限りは特に目覚ましい業績を上げている銘柄ではありません。株価が今後も長期的に上昇していくかどうかは、買収が完了したモバイル製油所が計画通りに稼働して業績が上がっていくことが重要なポイントとなりますので、長期投資の対象として考える場合は、次回の2022年Q2の決算発表を確認してから検討をしても良いと思います。
結論
バーテックス・エナジーは、既存の使用済み自動車オイルの再精製事業に加えて、新たにShellから買収したアラバマ州のモバイル製油所における原油精製、再生ディーゼルの生産を行う事業を取得して、原油を元にした石油精製・販売を主力とした企業に変革を遂げています。
Marathon Petroleum Corporation (MPC) やValero Energy Corporation (VLO)のような大手の石油精製企業と比べると規模の小さい銘柄ですが、その分、昨今の燃料価格の上昇の波に乗って、短期間で株価が大きく上昇していく可能性がある銘柄と考えます。
長期投資を考える場合は、モバイル製油所の業績が発表内容に含まれてくる2022年Q2の決算を確認してからの方が安全でしょう。
また、バーテックス・エナジーのモバイル製油所の石油精製事業の主要な顧客は米国の南東部の州が中心となり、米国内の景気の動向、燃料価格の変化の影響を受ける可能性が高いため、景気の動向とガソリン価格の推移に目を配りながら投資していくのが良いでしょう。