先週の米国相場では、CPIが事前予想から大きなサプライズなくインフレが下落傾向であることが確認され、FOMCでも事前の市場予想の通り利上げが見送られたことから、株式指数は全体的に上昇しました。天然ガス、銅、小麦などのコモディティ価格も上昇し、景気に敏感な航空、金属素材、重機などの銘柄も上昇しています。
景気が後退する懸念が薄れ、相場全体として上昇する動きが始まっているように見えます。
それでは、チャートを確認しながら先週の相場を振り返っていきましょう。
先週の振り返り
投資家のセンチメント
AAIIの調査では、強気に見ている投資家の割合は、6/7の44.5%から45.2%に上昇し、弱気については24.3%から22.7%に低下しています。
過去に強気の数字が上昇して弱気が下落して交差したのは2019年2月、2019年11月、2020年11月、2021年11月、2023年2月の5回で、うち3回はそこから中期の上昇、1回は短期の上昇、1回は下落の始まりでした。サンプル数は少ないですが、今後、60%の確率で中期的に上昇する可能性があると言えそうです。
相場環境
米国債10年物の金利は0.69%と小幅な上昇でした。2週連続で小幅な値動きとなっています。CPI、FOMC共に大きなサプライズがなかったことから落ち着いた動きとなっています。
VIXは下落トレンドを継続しており、再び13.5まで下落しています。
ナスダックの分析
ナスダックの月足チャートです。2022年の初めに3度に渡って上昇を阻まれていた15200の水準に到達し、小さな上ヒゲをつけて終えています。
ナスダックの週足チャートです。先週は+3.87%と強い上昇となりました。先週は上昇のスピードが一段と加速しています。一旦、調整に入る確率は高くなってきています。
ナスダックの銘柄のうち200日移動平均線を超えている銘柄の割合は上昇トレンドを続けています。
ナスダックの銘柄のうち50日移動平均線を超えている銘柄の割合も上昇を続けているものの勢いはやや弱くなってきました。
ナスダックの高値–安値銘柄数は72とプラス圏を維持しています。
ダウの分析
ダウの月足のチャートです。2022年11月から始まったレンジ相場の上限に達しています。
ダウの月足のチャートです。先週は1.28%の上昇となりました。34500の水準を力強く超えていけるかどうかが、上昇トレンドを維持していけるかどうかのポイントになりそうです。
ダウの銘柄のうち50日移動平均線を超えている銘柄の割合は上昇トレンドを維持しています。まだ上昇の勢いが弱まる兆候は見られません。
S&P500の分析
S&P500の月足のチャートです。2022年8月の高値を超えて力強く上昇しています。
S&P500の週足のチャートです。先週は2.61%の上昇でした。ナスダックと同様に上昇のスピードが加速しています。
S&P500の50日移動平均線を超えている銘柄の割合は上昇トレンドを維持しています。
S&P500のハイテク銘柄だけを取り出して見てみると、50日移動平均線を超えている銘柄の割合は90%を超えており、買われ過ぎの水準に到達しています。2022年弱気相場ではこの水準に達する度に売られる傾向がありましたが、2019年、2020年、2021年の強気相場の時にはこの水準に達しても売られることなく上昇を継続する傾向がありました。ここからさらにS&P500が上昇を続けていくようであれば、完全に強気相場に入ったと言えそうです。
ラッセル2000の分析
ラッセル2000の月足チャートです。6月に入ってからの上昇幅は7.47%に達しています。
ラッセル2000の週足チャートです。先週は0.70%と小幅な上昇でした。少し大きめの上ヒゲをつけており、上昇の勢いが弱まっているように見えます。
ラッセル2000の銘柄のうち50日移動平均線を超えている銘柄の割合は上昇トレンドを維持しているものの、MACDは下向きになりかけており、上昇の勢いは衰えつつあります。
コモディティの分析
原油価格は1.86%の上昇です。大きな下ヒゲをつけて終えています。今年の3月以降、67の水準まで低下する度に買われる動きとなっています。
天然ガスは16.77%と非常に強く上昇しました。トリプルボトムらしきパターンとなっており、上昇する可能性の高いチャートとなっています。
銅価格は2.64%の強い上昇となりました。2週間連続で出来高も増加してきています。
金価格は0.30%の小幅な下落です。トレンドラインを割り込んだところで反発し、大きな下ヒゲをつけて終えています。短期的に上昇する確率が高いチャートとなっています。
小麦価格は11.31%と力強い上昇で2022年10月から続いていた下落トレンドをブレイクしています。ここから上昇トレンドを開始できるかを確認していきたいと思います。
セクター分析
セクター別のパフォーマンスを見ると、先週はすべてのセクターが上昇し、特に情報技術、一般消費財、素材、工業が強い動きとなっています。
業種別に見てみると、3週間連続で自動車が非常に強く上昇しています。航空、紙製品、半導体、靴、ソフトウェアが上昇しています。その他には、重機、旅行サービス、銅などの景気に敏感な業種も上位にランクインしています。大きく下落しているのは健康保険、ホテルREIT、銀です。
業種別のパフォーマンスの推移を確認すると、新しく上昇を開始しているのは、航空、電子部品、医薬品流通、旅行サービスです。
国別のパフォーマンスを確認すると、先週はアルゼンチンの銘柄が非常に強く上昇しました。
アルゼンチン銘柄は6月に入ってブレイクアウトし、力強い上昇トレンドを開始しています。
個別銘柄の動向
力強く上昇しているのはソフトウェア(MSFT、ORCL、ADBE、NOW)、半導体(NVDA、AVGO、INTC)、インターネット(META)、自動車(TSLA、TM、LI)、インターネット小売(BABA、PDD、JD)、靴(NKE)、医療機器(MDT、EW)、重機(DE)、金属(BHP)などです。
健康保険(UNH、ELV、CVS)の下落が大きく目立っています。
今週の戦略
現在、株式指数の上昇は半導体、ソフトウェア、自動車、工業株が牽引しています。ハイテク銘柄の上昇は過熱感が強くなってきていますので、セクターローテーションを繰り返しながら上昇していくシナリオを想定し、急騰して伸び切ったチャートとなっている銘柄からは一旦撤退し、新しく上昇を開始した銘柄を対象にトレードをしていきたいと思います。
監視銘柄
監視銘柄は以下の通りです。新しく追加した銘柄はABNB、COHR、DRD、INTA、INTC、U、YPFです。
監視銘柄のチャートはこちら。
今週の決算予定
今週はFDXの決算、特にガイダンスに注目したいと思います。
6/20
- FDX
6/21
- WGO
- KBH
6/22
- ACN
- CMC
- DRI
- GMS
6/23
- KMX