【米国株銘柄】石油プロダクトタンカー Scorpio Tankers Inc. スコーピオ・タンカーズ (STNG)は良い投資先か?

企業研究

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2022年は世界的なコロナ禍からの回復によるエネルギー需要の高まりと、さらにロシアとウクライナ戦争によりロシア産の石油・ガスの輸入制限が各国で検討されています。これに伴い他の生産地から石油やガスを調達する必要が高まっている状況です。

このような状況において、石油やガスの生産を行う企業だけでなく、石油・ガス業界の様々な周辺分野においても需要の高まりを受けて業績の向上と株価の上昇が見られます。

この記事ではガソリン、ディーゼルなどの石油精製品を海上輸送するプロダクトタンカーを運行しているScorpio Tankers (STNG) について調査した結果をまとめています。皆さんの銘柄選定のお役に立てば幸いです。

結論としては、石油精製品の海上輸送は、コロナ後の経済活動の回復、および地政学的な要因から2022年Q4に向けて増加する見通しであり、それに伴ってScorpio Tankersの業績も成長していくことが見込まれます。景気後退の懸念が現れてくるまでの間は有望な投資先と考えます。

それでは、Scorpio Tankersの企業概要を見ていきましょう。

Scorpio Tankers Inc. スコーピオ・タンカーズ

企業概要

  • ガソリン、ディーゼル、ジェット燃料などの石油精製物の海上輸送を行うプロダクトタンカーの最大手です。 本社はモナコにあります。
  • ハンディマックス、MR(ミディアムレンジ)、ロングレンジ1(LR1)/パナマックス、ロングレンジ2(LR2)/アフラマックスの4つのセグメントで運行しています。
  • 131隻のタンカーを保有(自己保有、リース、チャーター含む)しており、91%の船は韓国で造船されています。短距離から長距離の輸送まで幅広く対応しており、約半分の64隻のタンカーが長距離用です。
  • 顧客はBPChevronExxonShellValeroなどの大手エネルギー企業、石油精製事業者です。

  • プロダクトタンカーの保有数は世界一です。
  • 保有するタンカーの平均年齢は6年と他社と比較して最も低く、新しいタンカーを多数保有しています。

プロダクトタンカーの位置付け

  • 原油の採掘から消費地へ輸送されるまでの流れは以下のようになっており、Scorpio Tankersはプロダクトタンカーを利用した石油精製品の輸送を行っています。

原油生産原油輸送(原油タンカー)精製精製品輸送(プロダクトタンカー)ターミナル

スコーピオ・タンカーズの顧客

スコーピオ・タンカーズの顧客は大きく以下の3つに分かれます。

  1. 石油原料の輸出入を行う業者
  2. 石油企業 BPChevronExxonShell
  3. 石油精製業者 Valero

プロダクトの需要の増加要素

プロダクトタンカーの需要が増加する要因は以下の3点に集約されます。

  1. 石油海上輸送量の増加(石油消費量の増加、精製マージン、精製スループット)
  2. 輸送距離(精製拠点から消費地までの距離、精製拠点が採掘拠点に近づいている状況)
  3. 取引動向(価格変動が大きいため裁定取引の機会増加、備蓄量の低下、地域的な偏り)

ロシアとウクライナ戦争による影響

  • ロシアとウクライナの戦争によりディーゼル不足の状況はさらに悪化しています。
  • 2021年にはロシアが輸出している石油製製品のうちディーゼルが6割を占めていました。また、ロシアの石油製製品の輸出先については欧州が67%となっていました。
  • 今後、ロシア産ディーゼルに代わる新しい輸送ルートとして、米国欧州、中東欧州、極東欧州が見込まれています。
  • 2022年2月以降に石油精製のマージンが急激に増加しています。米国の数字を確認すると、2021年9月までは$10/バレル以下だったものが、2022年4月時点で$20/バレルを超えて石油精製マージンは2倍以上に増加しています。

石油市場動向

  • 石油の需要はコロナ前を上回っている状況で、2022Q4に向けて右肩上がりで増加していく見込みとなっています。

  • ジェット燃料の需要については、まだコロナ前の水準には戻っていませんが、2022年末にはほぼ同等の水準まで回復することが見込みとなっています。
  • 石油製製品の需要についても2022年に入ってからコロナ前を上回る水準まで回復しています。

  • 2022年はQ4に向けて石油製製品の需要はQ174.6 md/dから78.6 md/dに増加する見込みで、増加率は+5.4%になります。
  • 海上精製品の輸出量は4月にコロナ前の水準を超えてきています。
  • 2021年の中頃からガソリン、濃縮物の備蓄量は歴史的に低い状況となっており、需要を満たすために石油精製物の生産量は増加傾向にあります。

STNGの最近の値動き

  • 週足チャートを確認すると、2022年4月末に2021年6月の高値を超えてきたところです。
  • 業績については2021年Q4から増加傾向に転じて、2期連続で売上と利益が増加しています。

  • 日足のチャートを確認すると、4月末の決算発表前あたりから出来高の増加を伴って力強く上昇しています。

 

関連銘柄

Scorpio Tankers以外の原油および石油精製品の海上輸送を行っている企業には以下のようなものがあります。この中でチャート的に良い動きをしているのはTRMD、INSW、TNK、TNPの4銘柄です。

プロダクトタンカーの代表銘柄
  • TROM plc (TRMD)
  • International Seaways, Inc. (INSW)
原油タンカーの代表銘柄
  • Teekay Tankers Ltd (TNK)
  • Tsakos Energy Navigation (TNP)
  • Frontline Ltd (FRO)
  • Nordic American Tankers (NAT)
  • DHT Holdings (DHT)
  • Euronav NV (EURN)

ロシア産原油の輸入禁止の動向

5/8時点では、まだ欧州によるロシア産原油の輸入はEU内でも足並みはそろっておらず禁止には至っていません。しかし、石炭の輸入禁止に続いて2022年末に向けて輸入禁止の動きは少しずつ進んでいくことが予想されます。

EU、ロシア産原油の年末までの輸入禁止を提案へ-関係者

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-04-30/RB6AYGT0AFB401

結論

石油精製品のプロダクトタンカーによる海上輸送の需要は、コロナ後の経済活動の回復、および地政学的な要因から2022年Q4に向けて増加する見通しであり、それに伴ってScorpio Tankersの業績も成長していくことが見込まれます。

今後、特に欧州の景気が後退せずに、経済活動が回復していく状況においては、Scorpio Tankers (STNG)は有望な投資先と考えます。

ウクライナ戦争、インフレの動向を注視しながらトレード対象としてエントリーのタイミングを検討していきたいと思います。

エントリー後の売り時についてはこちらの記事をご参考に。

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Twitter経由で、アメリカがリセッション入りしたら石油精製品タンカー銘柄は半値になるんでしょうか?と質問をいただきました。 私自身も石油プロダクトタンカー株を保有しており、せっかくの良い機会なので海運株の株価に影響を与える要因を調査して...

 

参照資料

スコーピオ・タンカーズ IRプレゼン資料(2022年5月23日)

https://www.scorpiotankers.com/wp-content/uploads/2022/05/STNG-Company-Presentation-May2022_VF.pdf

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