はじめに
この記事は比較的短い時間軸でスイングトレードをしている方向けに書いたものです。
「3.相場全体の下落が始まったらやるべきこと」の内容は株式相場が天井をつけた時に中長期の投資をしている方がやるべきことを記載したものではありません。早めの損切りを推奨する記載となっていますが、インデックスの長期積立投資や高配当株の長期保有をしている場合には、逆にやるべきではないことになりますのでご注意ください。
「4.次の上昇相場に向けた準備」については、短期トレード、長期投資をしているどちらの方にも役立つ内容になっていると思います。
株式相場の天井について
この記事は2021年末に強気相場が天井をつけて弱気相場が始まった2022年1月に記載したものです。またいつかやってくる上昇相場とその天井をきちんと見極められるようになっておきたいので整理しておきたいと思います。
要約
- 数年間の上昇相場で市場を牽引していた主導株の多くが異常な動きを見せ始めたら転換期の始まり。
- 上昇相場の最後に不況耐性のある銘柄(金、銀、食品、タバコ、電気、電話)が上昇してきたら最終局面。
- 先導株は先に下落を開始する。空売りで最も利益を得られる下落がくるのは天井をつけてから約半年後。
米国株投資本の記載内容と見解
市場の方向の大きな変化を示す指標として平均株価の次に重要なものは何かと言えば、主導株の動向である。上げ相場が何年か続いたあとにマーケットを牽引していた個別銘柄の大多数が異常な動きを見せ始めたら、市場が転換期を迎えていると確信してよいだろう。
過去を振り返ると、2021年2月に2020年の強気相場を先導していた成長株(ARKK ZM PTON CRWD)の転換が始まり、2021年11月にさらに残りの成長株(DOCU ADBE NET ZS)も下落を開始し調整が進行しました。今から考えると、相場の転換は1年程前の2021年前半から始まっていたのだと思います。
IPO・・・2021年2月に天井を付けた
ARKK・・・2021年2月に天井を付けた
WCLD・・・2021年11月に天井を付けた
NASDAQの構成銘柄のうち200日移動平均線を上回っている銘柄の割合・・・2021年2月に最高値
強気相場が2年ほど続いたあとに、金、銀、タバコ、食品、食料雑貨、そして電気や電話などの公共事業のような業種グループで上昇が見られたら、マーケット全体に天井が近づいている可能性がある。
2022年1月17日の週からマーケット全体の下落が明確に進み始め、唯一下落に抵抗している銘柄が、食品・飲料、タバコ、電話あたりになってきています。1月の前半に調子の良かった石油株や金属素材株についても下落が始まっています。金、銀の価格はまだ力強い上昇はしていませんが、マーケット全体として天井をつけて本格的な調整相場に入っています。
- タバコ(PM MO)・・・2021年9月に最高値。
- 食品(FLO KO MDLZ)・・・2022年1月に最高値。
- 食料雑貨(KR)・・・2022年1月に最高値。
- 電話(T VZ)・・・2021年5月に直近の最高値。
- 電気(DUK SO)・・・2021年8月に最高値。
- 金、銀(NEM GOLD AG)・・・2020年8月に最高値。まだ大きな上昇は見られない。
PM
MDLZ
KR
DUK GLD
T
弱気相場の初期段階では、特定の主導株が下降トレンドに抵抗するかのように強く、上昇できるという印象を与えるものだ。しかしこれは単に、避けられない下落という運命に逆らっている姿にすぎない。やがて本格的な下落が始まると、そこから逃れられる銘柄はなく、いずれは主導株ですら例外なく売り局面に屈するのだ。
上記の動きは2021年12月から2022年1月の前半から始まっています。ハイテク成長株の多くが下落している中でこれまでひたすら上昇を続けていたGOOG、MSFT、AAPLも遂に下落を始めました。
チャートを使って市場の動きを理解している投資家ならば、市場の天井付近で魅力的に見える先導株などほとんどないことを知っている。このような時期というのは、正しく形成されたベースから抜け出るような銘柄が単に一つも見られないのだ。最高の銘柄の買い時はもうとっくの昔に過ぎてしまったということである。
2022年1月時点でまさに上記のように、優良銘柄の多くも調整に巻き込まれてチャートが崩れ始めており、エントリーしたいと思える上昇トレンドでパターンを形成している銘柄はごくわずかという状況です。
空売りで大化けしたパターンはほとんどすべて、以前急成長した主導株が明らかに天井を打ってから5〜7ヶ月後に現れている、ということである。
ARKKが天井をつけたのは2021年2月。そこから9ヶ月後の2021年11月に下落が加速しました。2021年11月に天井をつけたハイテク成長株は、今後、5ヶ月後であれば2022年3月、7ヶ月後であれば2022年5月頃に再度下落が加速するリスクがあることを想定しておくと良いと思います。
相場全体の下落が始まったらやるべきこと
2022年1月時点で相場が天井をつけて下落が始まっている状況ですが、調整局面、弱気相場の時に何をすべきかをまとめておきます。
要約
下落相場が始まった時にスイングトレーダーがやるべきことを短くまとめると以下の2点になります。
- ナンピン買いをせずに損失が小さいうちに撤退する。
- 急落した銘柄を安価になったと思って買わない。
米国株投資本の記載内容と見解
長らく相場を引っ張ってきた先導株が大天井を付けたら、それが80%下げる確率は50%あり、それが50%下げる確率は80%ある。
2020年から2021年にかけてコロナショック後の相場を牽引したハイテク成長株の高値からの下落率は以下の通りです。
- PTON -84%
- UPST -77%
- ZM -74%
- AFRM -67%
- ARKK -55%
- NFLX -43%
- ADBE -29%
- AMZN -25%
- GOOG -15%
- MSFT -15%
- AAPL -10%
2022年1月時点でZM、PTON、UPSTはすでに80%前後の下落となっています。
ARKK、AFRMは現時点で50〜60%程度の下落ですが、ここから80%までの下落が50%の確率で発生するということになります。最近下落が始まった ADBE AMZN GOOG MSFT AAPLについては、今後、最高値から50%まで下げる確率が80%、上昇もしくは横移動は20%の確率と考えると、なかなかエントリーしずらい局面です。
下げている時に、この銘柄はどこかで再び上げると考えて、「ナンピン買い」をすれば、膨らみ続ける含み損によって心理的に打ちのめされ、最終的にはトレード口座が大打撃を受ける。
下げ始めの兆候が見られる銘柄を安くなったからとナンピンし続けてしまうと、仮に決算結果が期待に届いていなかった場合、投資家の心理も良くない相場環境では株価が急落して大きな損失を生むリスクがあります。
間違っても、株価の急落を買いの好機と思ってはならない。このワナにはまる投資家は多い。彼らの持ち株が突然、急落する。すると、彼らはマーケットが間違っているに違いないと思う。持ち株はまだ順調に上げ続けると思い込んで、さらに買い増す時だと判断するのだ。
今週と来週は2021年4Q決算発表が本格的に始まりますが、Netflixと同じように急落する銘柄も出てくるリスクがあります。くれぐれも割安になったと勘違いして手を出してしまわないよう肝に銘じておきたいと思います。
会社が倒産しなくても、株価の大幅下落で苦しむことはよくある。また、下げたあとは横ばいを続けて、ポジションは何年も、場合によっては何十年も「含み損」の状態が続くことがあるのだ。
書籍内に記載されていた大幅下落銘柄の例を二つ載せておきます。
LL Flooring Holdings, Inc.(LL)
LL Flooring Holdings, Inc.(LL)は最高値から90%の下落後、2016年以降に一旦は$30〜40まで戻していますが、結局、8年経過してもいまだに2013年末の最高値には遠く及ばない状態が続いています。このチャートを見ると、一時的なブームで上昇して元の価格に戻った銘柄を安くなったと思って購入してしまうのは非常に危険な賭けであることが分かります。(PTON ZM AFRM UPST等)
Cisco Systems, Inc.(CSCO)
Cisco Systems, Inc.(CSCO)のチャートです。最高値から90%下げた2002年の$11という価格からは、2004年までに140%の上昇、2022年1月時点には$56まで戻して420%の上昇となっています。結果的にはうまく底値で拾うことができればそれなりのリターンが得られたということになりますが、保有期間も考えると投資効率は良くありません。
次の上昇相場に向けた準備
では、2022年初旬のような弱気相場が開始した局面では私たちのような個人投資家、トレーダーは何をすれば良いのでしょうか。二つの書籍からやるべきことを拾い上げてみました。
要約
天井からの下落開始時に損切りでキャッシュに引き上げた状態で、指数のチャートを監視してマーケットの底を見極めつつ、次の上昇相場のサイクル時のエントリー候補となる銘柄を探して準備していく時間にするのが理想です。また、インデックス投資については下落中に買い増しを検討していきます。
- 相場全体が下落を続ける中で大きく下落せずに持ち堪えている銘柄を探す。
- 相場全体が下落後に横ばいしている間にいち早く抜け出して上昇を開始する銘柄を探す。
- 相場全体の平均株価を観察し、マーケットの底を見極める。
- インデックス投資や投資信託を購入しているのであれば30%下落したところで買い増しする。
米国株投資本の記載内容と見解
最も良い銘柄は株価指数よりも先に底入れする。調整局面で主要な株価指数が安値を切り下げているときに、先導株は先に底を打ち、安値を切り上げていく。株式市場が全般に下げるなかで最もよく持ちこたえて、新たな上昇相場の最初の4〜8週間に新高値圏内に入る銘柄は真の先導株であり、大幅な上昇が期待できる。
市場全体が底入れすると、下落に最も耐えた先導株が最初に上昇を始め、ベースを上にブレイクする。ほとんどの投資家はこの現象に気がつかず、先導株の買い場だと認めようとしない。
市場全体が下落相場から抜け出していくタイミングで見つけていきたいのは以下のような銘柄です。
2004年のApple(AAPL)
2004年から2005年にかけてNASDAQが上昇できずにいる中で、AAPLは290%上昇しました。
2009年のNetflix(NFLX)
2008年後半に市場全体が下落した後に横ばいを続けていた期間に、Netflixは大きく上昇しました。
株価の調整時期では、その規模にかかわらず、必ずある時点でマーケットが上昇を試すものである。そのときに焦ってその波に飛び乗ると痛い目に遭う。マーケットが新たな上昇トレンドに入ったことを確認できるまでは、じっと待つことだ。
試しの上昇が始まって4日目以降は、いずれかの主要な平均株価が前日よりも出来高を大幅に増やして上昇し続けるかどうかを観察する。これが起これば、その上昇が本物になる可能性が一層高くなる。最も強力な上昇は、だいたい上昇を始めてから4〜7日目に起こる。
忘れないで欲しいのは、どんな新しい強気相場も強い株価と出来高の増加が証明されないまま始まったことはないということである。忍耐強く待ち続け市場に耳を傾けておいて損はない。
2003年のNASDAQの底のチャートです。前日の価格を上回って終了した日から4日目に出来高が平均を大きく上回っていることがポイントです。
経済の低迷が続いたり、新聞やテレビが経済状態の悪さを報道しているならば、ファンドが最高値から30%以上下落したところで追加で資金投入することを検討すべきだ。弱気相場がすでに終わったと感じるならば、少し資金を借りてでも購入量を増やしていいかもしれない。忍耐強く待つことができれば、価格は2〜3年で順調に上昇していくはずだ。
インデックスETFを積立投資している場合、もしくは同様の投資信託を購入している場合は、30%以上の下落を目安に分散した資金投入をしていく戦略になります。今、QQQは13%前後の下落なのでさらに20%程度下落するのを待って購入を再開するのが良いでしょう。QQQであれば$260〜$280がターゲットになります。
最後に
最後まで読んでいただきありがとうございます。弱気相場が始まった時にやるべきことは以下の3つです。
- 相場の天井を見極めて大きな下落の前にいち早く撤退し
- 次の上昇サイクルを牽引する銘柄を探しながら相場の底打ちをじっくりと待ち
- 底からの反転を確認できてから先導株にエントリーする
これを完璧に実行するのは難しいと思いますが、少しでも精度を高く実施していけるようチャート、決算発表、市場ニュースの監視を続けていきたいと思います。
皆さんの米国株トレード、投資に少しでも参考になれば幸いです。