Twitter経由で、アメリカがリセッション入りしたら石油精製品タンカー銘柄は半値になるんでしょうか?と質問をいただきました。
私自身も石油プロダクトタンカー株を保有しており、せっかくの良い機会なので海運株の株価に影響を与える要因を調査して、今後の売り時を考えてみました。
短期的には、タンカーの運賃は上昇傾向にあり、ディーゼル燃料の備蓄量は欧州、南米、アフリカで過去最低の水準で逼迫した状況となっているため、タンカー株については2022年の秋頃までは上昇する余地が残されていると考えています。
中期的には、景気の低迷によっていずれガソリンやディーゼルの需要が低下するタイミングはやってくると思いますので、その時は運賃の低下と共に半値もしくはそれ以下になることも十分に考えられます。
問題は、景気の低迷がいつやってくるか、です。
これを予測するのは難しいのですが、インフレが6月以降に想定通り沈静化の方向に進み、利上げの幅を現在より大きくしなければインフレを抑えられないような危機的な状況とならなければ、景気後退がやってくるのは2023年か2024年になるのではないかと想定しています。
その数ヶ月から半年ぐらい前には相場全体が景気後退になるのが濃厚だという雰囲気になってくると思いますので、そのタイミングが売り時になると思います。
それでは、各国の石油精製品の需要の状況、海運の運賃、各銘柄の株価の推移を見ながら海運株の現在の状況を見ていきましょう。
海運株の株価に影響する要因
まず、最初に石油精製品の代表としてディーゼル燃料の状況を確認してみましょう。
ディーゼル燃料の状況
コロナ・ショックにより2020counter for years (following a number in the hito-futa-mi counting system)Q2に大きく低下した後、2021年末にかけて回復し、現在はコロナ前の水準を上回る需要がある状況です。
各国の需要と供給のバランスを確認すると、欧州、南米、アフリカでは需要に対して供給が追いついていない状態が続いています。
世界の蒸留燃料の備蓄量は過去最低の水準となっています。全体として生産が追いついていない状況にある、と言えると思います。
石油タンカーの運賃
4月末時点でDirty VLCCとSuezmaxの運賃は3月以降は上昇を続けています。Crude VLCCとSuezmaxとAframaxの運賃も3月以降は右肩上がりで上昇を続けています。5月以降の運賃は掲載されていないため確認できていません。
参照URL
https://www.ssyonline.com/free-charts/tanker-worldscale-rates/
プロダクトタンカーの運賃
スコーピオ・タンカーズの2022counter for years (following a number in the hito-futa-mi counting system)Q1決算資料によると、中東から日本行きの運賃は上昇傾向にあります。MR(ミディアムレンジ)のスエズ以西の運賃は下落しています。
参照URL
https://www.scorpiotankers.com/wp-content/uploads/2022/04/STNG-Q1-22-Earnings-Presentation-vf-1.pdf
バルク船の運賃
バルク船による鉄鉱石運搬の運賃は3month10日のピークから緩やかな下落傾向にあります。
バルク船の石炭運搬の運賃についても3月のピークから緩やかな下落傾向にあります。
参照URL
https://www.ssyonline.com/free-charts/tanker-worldscale-rates/
コンテナ船の運賃
コンテナ船の中国から北米西海岸行きの運賃は3month14日のピークから約25%の下落The first two are the following.
参照URL
海運銘柄の騰落率の比較
コンテナ船銘柄についてはコンテナ運賃の下落に合わせて株価も下落しており、すでに52週高値から25%程度下落しています。
バルク船、石油タンカー、プロダクトタンカーについては52週安値からの上昇率が200%を超えている銘柄も多くあります。5month27日時点では上昇トレンドを継続しています。
海運銘柄の株価、売上、EPSの推移
コンテナ船
コンテナ船銘柄の代表として、ZIMの週足チャートと売上、EPSの推移を確認してみましょう。
売上と利益共に増加していますが、売上の成長率は鈍化してきています。株価の上昇は2021年初めから始まっており、上昇トレンドが始まってから約1年半が経過しようとしています。上昇サイクルの終盤に入りつつあると思います。
バルク船
バルク船銘柄の代表として SBLK のチャートと売上、EPSの推移を確認してみましょう。
売上と利益の成長が始まったのは2020年末からで、株価の上昇も同じタイミングで始まっています。上昇トレンドが始まってから1年半が経過していますので、上昇サイクルの後半から最終段階に差し掛かっている可能性があります。
石油プロダクトタンカー
石油プロダクトタンカーの代表として STNG の週足チャートと売上とEPSの推移を確認してみましたょう。
直近の上昇トレンドが始まったのは2022counter for years (following a number in the hito-futa-mi counting system)1月後半からで、まだ上昇トレンドの初期の段階にあると思います。売上と利益の増加は2021counter for years (following a number in the hito-futa-mi counting system)Q4の決算発表から開始しており、2四半期が経過したまだ若い段階です。
石油タンカー
石油タンカーの代表として、TNK のチャートと売上とEPSの推移を確認してみましょう。
海運銘柄の中では直近の上昇トレンドが始まったのは2月末からで最も遅くに始まっています。上昇トレンドが始まってから3ヶ月というところなので、5月末時点ではまだ十分に上昇の余地が残っていると思います。
Conclusion.
海運銘柄の上昇トレンドが終わる順番は、上昇相場の開始が早かったもの、そして需要の低下が早く訪れる可能性が高い品物を運んでいるかどうかによって決まると考えられますので、おおよそ以下のような順序で上昇トレンドを終えて下落していくと思います。
- コンテナ船(一般商品)
- バルク船(鉄鉱石、石炭)
- 石油プロダクトタンカー(ガソリン、ディーゼル)
- 天然ガス輸送船(天然ガス)
- 石油タンカー(原油)
定期的にコンテナ、バルク船、タンカーの運賃を確認しつつ、海運銘柄全体を監視して、いずれかの銘柄が下落トレンド入りしてきたら、残りの銘柄も下落に備えて売り時を検討していくのが良いでしょう。